秋になり、爽やかで過ごし易い季節になってきた。と同時に、向かいのカナちゃんの家に不良少年、少女たちが集まり始めた。ダボダボのパンツを履いて、紫色のトレーナーを羽織った若者たちが、自動販売機の前にしゃがみこんでタバコを吸ったり、ケタタマシイ音をたてながらバイクで走り回っている。
夫は彼らに正面から「何歳なんだ?学校は?タバコなんか吸うな!!」と言っている。私は、その隣で「このあたりは、学校でも警戒してるよ。知ってるの?」と聞くと、眉毛を細くした、三池崇史の映画に出てくるような若者が、か細い声で「知ってます。」と答える。
ログハウスから15分ほど歩いた新大工市場で買い物をしながら、夫は携帯電話で市役所に、「最近、不良少年、少女たちがたむろしているので、警戒してほしい。」と電話する。
買い物を終えて、ログハウスに帰る途中、小学校帰りのカナちゃん、ハナちゃんと一緒になる。
「暑い、暑い、アーー疲れた」と、小学1年生のカナちゃんが、私の買い物バッグにぶらさがってくる。
カナちゃん、ハナちゃんの住む家に3人のお姉ちゃん、お兄ちゃんがいて、不良少年、少女のたまり場になっている。両親は離婚し、お母さんと5人兄弟で住んでいる。
カナちゃんが私に話しかける。「ドラえもんにお菓子の家がでてきたよ。」
「ん?お菓子の家は、ドラえもんより前からあったよ。ヘンデルとグレーテルだったっけ?ねえ、お姉ちゃんのハナちゃん、知らない?」と聞くとハナちゃんは「知らない。。」と答える。
「カナちゃんち、白い犬がいたよね。最近見かけないけどどうしたの?」とカナちゃんに聞くと
「あのね。あのね。。。。知ってるけど言わない。。。」と答える。近所の畑を荒らして問題になっていたあの白い子犬はどこに行ったのだろう。。
夫が黙って前を歩き、後ろに続く私の買い物バッグにつかまりながらカナちゃんがいう。
「こうやって歩いていると、おばちゃんがお母さんでおじさんがお父さんみたい。」
ログハウスの近くにパトカーが止まっていて、警官や市役所の人たちが集まっている。
夫が、「先ほど、電話した者です。」と言うと、「最近、苦情の電話がよくかかってくるので、今後パトロールを強化します。」と、彼らが答える。
『カナちゃん、私たちは、5ヶ月前に死にそうだった捨て猫を拾ってきて、今は一緒に生活しているけれど、カナちゃんとは、一緒には生活できないんだよ。』と、心の中で囁きながら、カナちゃんたちと別れた。
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